学校からのお知らせ

Vol.19 「6年振りに見た初めての笑顔」

2008/12/03

 大学時代、聴覚に障がいを持った女子中学生の家庭教師をしていました。
筆談での指導という音の無い世界に、何とももどかしい時間だけが過ぎていた記憶があります。

 ある日、友人とボウリングをしていたら、見覚えのある女の子が男友達と2人で隣のレーンに入って来ました。6年前に家庭教師をしていたあの子です。楽しそうにしている彼女を見ていると、気を遣わせてはいけないという思いから声を掛ける事も出来ませんでした。しかし、居ても立ってもいられなくなって帰り際にメモで自己紹介すると、彼女もすぐに思い出してくれたらしく、彼にも状況を説明して驚きと笑顔で応じてくれました。 実は彼も聴覚障がい者だったのです。

 聞きたい事ばかりでしたが、表情でただ「久し振りだね!」「元気でやってる?」と伝えただけ。
それは、会話によって意志疎通が図れない事のもどかしさを改めて痛感した瞬間でした。そして同時に「この子たちはいつもこんな思いをしてるんだ...」と、何とも言えない憤りを感じたのでした。営業マンから介護現場に転職した私にとって「あの日の出来事が自分を福祉へと導いた」なんて気障な事は言わないけど、優しい気持ちに触れるキッカケになったのかも知れません。